コラム

子どものケータイ利用に深まる教師の悩み(中) - 下田博次


■ 生徒指導教員からの相談内容

 2000年の前半から、学校に押し寄せてきた携帯電話ブームの波に、まず生徒指導教員が翻弄されるようになり、学校への持ち込み阻止はできないまま前述のように多様な問題に直面せざるをえなくなっていった。

 以下、下田研究室がメールや来室、講演、シンポジウム会場などで受けてきた中高の生徒指導教員からの相談内容を生活指導、非行・逸脱、犯罪被害・加害の3種類に分け、10年間の主な相談事例(象徴的なものや件数の多いもので、明らかなネットいじめを除く)を説明しよう。


(1) 生活指導の相談

生徒の携帯電話所有率が増えてから、友達とのメールのやり取りで深夜までケータイを使うようになり学校で眠そうにしている(主に中学)。
女子生徒がケータイの料金支払いのため深夜のアルバイトをするようになり、ついには学校を退学すると言い出した(高校)。
女子生徒(時には男子生徒も)が、ネットで知り合った遠方の友達に深い恋愛感情を持ち、勉強にも身が入らないとか、会いに行く、あるいは友達のグループに入りたいので退学すると言い出した。
夜中に友達からの呼び出しメールを受けて出て行く。気軽に外泊するようになって困るという保護者からの相談にどう対応するべきか(高校)。
女子生徒に送られてくる男子生徒からのわいせつメールなど迷惑メールへの対処。
ケータイのメール、写メール、チェーンメール、学校裏サイト、プロフなどケータイの多様なメディア機能を使って悪戯や嫌がらせをしている。止めさせたり予防する方法はあるのか(中学・高校)。
恋愛サイト利用での恋のさや当てトラブル。どのように仲裁すべきか。


(2) 非行・逸脱行為に関する相談

暴走族・ギャル系の非行グループがネット(メールやプロフなど)を使って後輩を引っ張り込もうとしている(高校・中学)。
授業中携帯電話を使っている。取り上げると暴れるし、親がケータイを返してやってくれと怒鳴り込んでくる。どうしたらいいか(中学・高校)。
階段の下からケータイのカメラを使って女子生徒のスカートの中を盗撮したりしている。男子生徒ばかりか女子生徒もやっていて困る(中学・高校)。
真面目な女子生徒が他校の不良と付き合い始めた。ケータイのゲームサイトで知り合ったらしいが、止めたいけれどどうすればよいのか(高校)。
授業中に外から呼び出しメールが入ってきて、教室から出ていく(高校)。
学校裏サイトやプロフで他校の生徒にけんかを売って暴力事件に発展した(中学)。
ケータイを使ってアダルトグッズやバイアグラを買っているらしい(中学・高校)。
ネットで教師や学校の悪口を言っている。


(3) 犯罪的被害・加害に関する相談

ケータイを使ってグループで売春をしていることがわかった。子ども同士でお客を紹介しあっているようだが、実態がつかめない(中学・高校)。
ケータイのアダルトサイト利用で高額請求され、親子で相談にきた(高校)。
男子生徒がグループで女子生徒をレイプして、その様子をケータイのカメラで撮影して脅した(中学)。
ネットオークションで詐欺行為を働いて警察に補導された(高校)。
学校裏サイトを使ってワイセツな書き込みや写真の交換をしている(中学・高校)。


 以上、下田研究室が相談を受けたり、悩みを聞いたりしたいくつかの象徴的事例を挙げたが、私どもの体験では、生徒指導主事らが子どものケータイ利用で最も多様な問題に直面してきたように思う。



■ 養護教諭からの相談

 生徒指導教員からの相談は、高校を中心に2000年頃から増えたが、2005年頃からは養護教諭からの相談が増えてきた。養護教諭からの相談は、生活リズムの狂いや思春期の心身の変化にともなう病理、悩みなど健康相談を除けば、人間関係のトラブルやそれに関連した性的関係性にからむケータイ問題相談が多い。 例えば以下のような問題がそれである。


(1) 生徒の性的関係に関する相談

女子生徒が妊娠をしてしまった。あるいは、中絶の相談に来た。相手を尋ねると、複数の男子生徒あるいは成人男性で、ケータイを使うとなぜこのように異性関係が複数化するのか教えて欲しい(中学・高校)。
生徒(男女)が性感染症の相談に来た。相手が複数で、名前や住所(成人男性の場合は職業、年齢)もわからないという。なぜこんなことになるのか(中学・高校)。
インターネットに氾濫する性知識(避妊など)の真偽に関する相談。サイトの見つけ方、判断基準などについての質問、相談。
メル友に会ったら、その後性的関係を執拗に迫られるようになった。


(2) 人間関係の複雑化による悩み相談

授業中気分が悪くなったということで保健室に来て、ベッドの中でメール交換をしている。信頼関係を壊さないで、どう対処すべきか。
メールのやりとりの誤解から友人と喧嘩になった、というが実際にどういうケースが多いのか。
匿名の掲示板の書き込みで知られたくないことがばらされている、と悩んでいる。
友人がセックスや変態小説など知りたくも無い情報を送りつけてくる。
プロフやブログで仲の良かった友人と関係が悪くなった。



 この他に、薬物やアダルトグッズなどの購入がネットで行われているようで心配だ、という相談も受けている。「自分は薬物は使っていないけれども、友達が使っているのでそれをやめさせたいと相談してくる生徒がいる」とか「面白半分にバイアグラをネットで買ってしまったという相談を受け驚いた」という養護教員も2005年頃から出てきた。

 また保健室は気分が悪くなった生徒が体を休めるためベットが用意されている。それを使って授業中できないメールをしに来るので困るという悩みも良く聞くようになった。たとえば「授業中気分が悪くなったということで保健室に来て、ベッドの中でメール交換をしている。どんなことを誰とやり取りしているのかを尋ねたところ、「メル友に友人関係の悩みを聞いてもらっている」とのことで、ショックを受けた。以前なら私たちに相談していたはずなのに・・・。」という具合である。



つづき
 子どものケータイ利用に深まる教師の悩み(下)



■下田 博次(しもだ・ひろつぐ)
NPO法人青少年メディア研究協会理事長
シンクタンク勤務から雑誌記者、放送番組制作などを経て現職。
警視庁少年インターネット利用問題研究会座長、インターネットの危険・有害性から子どもたちを守るためのウェブサイト「ねちずん村」を主宰。
著書に「学校裏サイト」「インターネット・リテラシー~子ども達の携帯電話・インターネットが危ない~」などがある。