第9期:保護者向け研修講師に求められる「伝える力」の体系化に着手

2017.9.8

~青少年ネット問題特有の事情を加味し、教育工学理論と各地の教育啓発実践の両面から整理~

 

 子どもたちのインターネット利用について考える研究会(座長:お茶の水女子大学 教授 坂元 章、以下「子どもネット研」)は、本年9月より第9期の調査・研究活動を開始したことをお知らせします。青少年ネット問題に関わる保護者向け研修講師に求められる技能について検討し、講師の養成・派遣をする側向けの提言、学校や自治体など研修会を開催する側向けのガイドラインをまとめた報告書を、2018年3月に公開する予定です。

 

 携帯電話の急速な普及に伴い、青少年のインターネット利用に関わるトラブルが社会問題となり、既に10年が経過しようとしていますが、特に重要とされる各家庭での取り組みは、まだ不十分な状況が続いています。また一般に、青少年と保護者の間でのインターネットに関する知識の差が大きいことから、保護者向け教育啓発の重要性は、国や自治体にも認識され、官民によるさまざまな取り組みが精力的に続けられています。

 その中での課題の一つが、青少年ネット問題に合わせた保護者向け研修講師の質と量の充実です。研修講師には、最新の技術的な知識が求められることは当然ながら、受講する保護者の理解の度合いもさまざまなため、伝える技能も高い水準が期待されます。また当初は、中学生や高校生を持つ保護者だけが研修会の主な対象者でしたが、最近では小学生や未就学児の保護者も対象となるなど、研修対象者の数は大幅に増加していることで、適切な技能を備えた講師は足りていません。

 こうした状況の下、主に無償で講師派遣を行うインターネット関連事業者や業界団体では、それぞれの組織内で独自のトレーニングを行い、質的な水準を高めていますが、劇的に講師を増やすことは難しいと思われます。一方、自治体や、地域に根ざしたNPO団体などが有償・無償で講師を派遣する取り組みでは、講師に求められる技能が明確化されていないことなどから、その養成や知識の更新の仕組みづくりに苦労している状況が見られます。

 

 子どもネット研では設立以来、保護者向けの情報提供に焦点を合わせて調査検討を続けてきました。2011年度には「保護者向け教育啓発のあり方」として、地域密着型の教育啓発を提唱し、自治体との協働による実践を続けています。今期は、教育啓発に関わる講師に必要な「考え方や知識、技能」について、教育工学の理論面での整理を行う他、各地で活躍する研修講師へのヒアリングなど実践面での知見も収集します。講師を養成・派遣する側に向け提言をまとめる他、学校やPTA、自治体など講師を受け入れる側にも、講師選定のあり方を含む、研修会企画運営のガイドラインを提供する予定です。また研修会講師の他に、インターネット利用トラブルの相談員等に求められる基礎的な知識・技能についてもあわせて検討の対象とします。

 

子どもネット研 第九期活動および体制の概要

第九期活動期間

研究会開催:2017年9月~2018年2月(予定)、報告書公開:2018年3月(予定)

 

委員(座長以下50音順・敬称略)

坂元 章(お茶の水女子大学 基幹研究院 人間科学系 教授)◎座長

井島 信枝(子どもねっと会議所 代表)

笹井宏益(玉川大学学術研究所 教授 / 国立教育政策研究所 客員研究員)○座長代理

新谷 珠恵(一般社団法人 東京都小学校PTA協議会相談役)

玉田和恵(江戸川大学 メディアコミュニケーション学部 情報文化学科 教授)

七海 陽(相模女子大学 学芸学部 子ども教育学科 准教授)

 

フェロー(50音順・敬称略)

漆 紫穂子(品川女子学院 理事長・中等部校長)

下田 博次(国立大学法人群馬大学 名誉教授)

竹島 正(川崎市健康福祉局障害保健福祉部担当部長/精神保健福祉センター所長)

 

アソシエイトフェロー(敬称略)

宮田 佳代子(フリーキャスター/城西国際大学教授)

 

運営事務局

ヤフー株式会社 、ネットスター株式会社、アルプス システム インテグレーション株式会社

#運営協力企業 ピットクルー株式会社

 

「子どもネット研」について

 子どもたちのインターネット利用について考える研究会(子どもネット研)は、子どもたちのインターネット利用をより豊かで安心なものにするために、諸課題を調査・研究し、保護者や行政・業界関係者向けに整理された情報を提供するために2008年に設立された専門家会議です。事務局はヤフー株式会社、ネットスター株式会社およびアルプス システム インテグレーション株式会社が担当している他、ピットクルー株式会社が運営に協力しています。 子どもの発達や教育、メディアとの関わりに詳しい学識経験者を中心に、学校関係者や保護者が集まり、これまでに「子どもたちの段階的なインターネット利用デビューのあり方」や「保護者向けの教育啓発のあり方」、「未就学児の情報通信機器との付き合い方」など調査研究し、その結果を関係者に提言しています。またPTAや地方自治体と協力し、安全利用のための教育啓発活動の実践やその効果測定にも取り組んでいます。

 

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